文明を築き上げてきた穀粒、絵の中に刺さる-イ・ソンヨン(美術評論家)
文明を築き上げてきた穀粒、絵の中に刺さる
イ・ソンヨン(美術評論家)
中心集中的な構造の作品を多く発表してきたムン・スマンは、ここ数年の作品の中にコメという素材を形態素として活用している。無限を連想させる形態の一連の列やモノクロ雰囲気の精製された画面で精神性は続く。「無」、「空」、「虚」のように定型化されにくい観念もやはり盛り込む対象になりうる。対立するものの総合において丸い構図は端と端がつながっているので容易である。水平的構図の場合、画面の外へ延長される感じを生かしながら無限との関係を設定する。彼の作品は始まりと終りの中間部分を捉えている。この中間は無限の一部分として有限であり、作品の変奏は無限である。多様性が一つに集中される姿で華麗さと瞑想的な雰囲気を同時に生かす。どんな色が共存するにせよ、作家はなめらかなつながりを目指す。それが風景なら当然空や海、またはそのすべてであり、画面の中の色とりどりの日の出のような重要な事件を知らせる症候であり、その事件の軸になる水平線や地平線の役割をする。
画面を同心円状にまたは水平にぎっしり埋め尽くす粒子は色であり、光であり、また両者間の転移であり、地上の重要な現実を象徴する物質でもある。「Cloud」というタイトルは空を背景に浮かんでいる最も自然なものを暗示すると同時に、現代デジタル文化で共有される情報の貯蔵庫を象徴するともいえる。貯蔵庫を埋めるのは米粒状の粒子だが、ここで作家は物質と文化の関係を取り扱う。点が幾何学的かつ観念的要素なら、コメは有機的かつ物質的な要素だ。規則的に配列された形態素は文字のような感じもある。コメは文明、すなわち口述性を越えて文字性に基づいた文明を可能にしたという点も強調できる。筆で直接描かなくても多様さが生かされている理由は複雑な製作工程のためだ。筆だけで作業することの方がより簡単かもしれないにもかかわらず、あえて機械的工程を1、2回でも入れている理由は、計算が介入した多様性が可能であるからだ。彼の単色画は華やかで洗練された都市文明から韓半島で稲作をしていた当時に遡る時間帯を含む。
特に作家はコメを意味する象形文字「米」を念頭におく。中心のある四通八達の構造は彼の以前の作業と連続している。ムン・スマンの作品において農耕文化の痕跡は土器とも関連がある。代表的な労働集約型の事業である農業は人間の社会化に大きな役割を果たした。四角形の作品に水平的に配置された粒子は未知の文字列と重ねられ、実在と情報との互換性を指す。今回の展示作品のタイトルである「クラウドno」に含まれた貯蔵所はディスクに事件に関する情報を集めておいたことを意味する。集めておいた過剰米が文明を築き上げたように、情報はコメみたくエネルギーの備蓄である。農業が始まった新石器時代が革命なら、情報の時代も革命だ。水平構図に内在した自然的イメージに情報という次元を加えた作品は多様な隠喩として伸びていく最小限の(minimal)芸術である。芸術は物質と精神の架け橋の役割をする。ムン・スマンが選択したコメという形態素は物質を代弁するのに十分な象徴性を持つ。それがどのような感情的、精神的共鳴を生み出すかは、それぞれの観客にかかっている。
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